- 2020-3-9
- ウェブマガジン「冬洋酒」
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ウェブマガジン「冬洋酒」では月4本、取材記事を配信しています。その連載の一つである「大宮冬洋の『常連になりたい!』」の第8回は、僕の自宅から徒歩7分のところにあるお花屋さんに登場してもらいました。接待から散髪まで、どのジャンルでも「お任せ」できる良き店を1つは確保したいと思うこの頃です。
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花を買うのが好きになったのは学生時代からだったと思う。好きな女性ができるたびに、2人で会えるときは小さな花束を持って行った記憶がある。恋愛成就という成果には結びつかなかったけれど、花屋に入ることに抵抗はなくなった。
そういえば僕の母親は花好きだ。3人の息子を育てるためにすべてのエネルギーを使い果たしたような人だけど、時間を見つけては植木鉢の花を慈しんでいた。トイレの花もときどき変わっていたと思う。僕が頼んで飼っていた犬が老衰で死んだとき、仕事先から実家に帰ると亡骸の上に野花をのせてくれていた。花には人を迎えるだけでなく、人の心を慰める効用があるのだと知った。
僕はいま、愛知県蒲郡市に住んでいる。約8万人の人口が少しずつ減っているような黄昏の自治体だけれど、探せばいいお店がある。引っ越して来てから7年半も経つので、散歩と口コミによって自分なりの「近所の好きな店」リストを作ることができた。花に関しては自宅から徒歩7分ほどのところにある「花萌」を頼りにしている。
花萌は、洋館を改装したような外観のお店で、中に入ると新鮮な花々がセンス良く陳列されている。僕は花の名前を数えるほどしか知らないけれど、なんとなく目を引くような花が必ずある。散歩帰りに自宅用に買うときは、そんな花を1輪か2輪買い、世間話を少ししてから帰路につく。
知り合いや家族に花束を贈るとき、その人の顔を思い浮かべて、なんとなく合いそうな色合いを決める。僕はあまりゴチャゴチャした花束が好きではないので、ラッピングも含めて色で統一感を出したい。
馴染みになった花萌の場合は、どんな相手に渡すのかだけでなく、僕なりのイメージを伝える。例えば、ロシア発祥の楽器を演奏する女性に贈るときは、「ロシアっぽくしてください」。無茶な要求かもしれないが、花萌の大西さん夫妻ならばなんとかしてくれるのだ。彼らのセンスを信用しているので、色合いについては口を出す必要はない。
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著者プロフィール
- 1976年埼玉県所沢市生まれ、東京都東村山市育ち。男三人兄弟の真ん中。一橋大学法学部を卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に入社して1年後に退社。編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターになる。
高校(武蔵境)・予備校(吉祥寺)・大学(国立)を中央線沿線で過ごし、独立後の通算8年間は中央線臭が最も濃いといわれる西荻窪で一人暮らし。新旧の個人商店が集まる町に居心地の良さを感じていた。今でも折に触れて西荻に「里帰り」している。
2012年、再婚を機に愛知県蒲郡市に移住。昭和感が濃厚な黄昏の町に親しみを覚えている。月のうち数日間は東京・門前仲町に滞在し、東京原住民カルチャーを体験中。
2019年、長期連載『晩婚さんいらっしゃい!』により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。
<著書>
『30代未婚男』(リクルートワークス研究所との共著/NHK出版 生活人新書)
『ダブルキャリア』(荻野進介氏との共著/NHK出版 生活人新書)
『バブルの遺言』(廣済堂出版)
『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』(ぱる出版)
『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)
『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せのつかみ方~』(講談社+α新書)
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