写真:「産休育休だけでなく婚活休暇も必要です!」と説く岡本さん(右)と田中さん。広告代理店出身だけに言葉選びが面白い
「仕事している場合じゃない。チャンスをつかめ!」
「仕事が忙しいのを言い訳にして婚活から逃げていたんです。結婚相手に高望みをしていたのもあります。30代後半で婚活を始めて厳しい現実に打ちのめされました。でも、痛い思いをして自分の立ち位置を知らずにいたら、私は今でも独身でもがいていたと思います」
ここは東京・南青山。大手広告代理店の元同僚だという岡本裕子さんと田中真菜美さんは、ハイセンスなこの街で結婚相談所hachidoriを運営している。拠点も名前もオシャレだが、2人はきさくでぶっちゃけキャラだ。
会社員時代、田中さんが遅くに始めた婚活で足を踏み外しそうになるたびに、既婚者の岡本さんが助言をしていた。例えば、ようやく恋人ができて旅行の約束をしたのに田中さんは顧客との打ち合わせを優先しようとしていたと岡本さんは呆れかえる。
「仕事なんて私たちに押し付ければいい。絶好のチャンスをつかまないでどうする!と叱りました」
岡本さんの叱咤激励のおかげもあり、田中さんはその恋人との結婚を果たす。そして、婚活には軌道修正してくれる人の存在が必要だと痛感した。
一方の岡本さんは以前から独立開業を考えていた。田中さんの婚活をサポートした経験から「きちんとサポートする結婚相談所は利用者が最も結婚に近づける場所になり得る」と直感。田中さんを誘って開業することに決めた。
「忙しぶったりは決してせずに職務を全うする彼女の働く姿勢に惚れ込んでいたからです」
自分たちを「元社畜」と自嘲するほど働いていたので、思考がつい仕事中心になりやすい会社員の気持ちが痛いほどわかるのが2人の強みだ。田中さんは静かに語る。
「私は婚活を始めて結婚するまでに3年ほどかかりました。お金も労力もそれなりに費やしたな、と感じています。それでも現実と自分の立ち位置に気づけたからこそ結婚できたんです。他の人にはもっと短期間で結婚できるようにしてあげたい、と思いました」
独自開発のアンケート分析で「婚活偏差値」を算出
こうした思いがあるだけに、hachidoriの方針は明快で一見するとビジネスライクだ。入会者のカウンセリングでは、婚活マーケットの中で自分の立ち位置を知るために独自開発したアンケート分析によって「婚活偏差値」を算出する。
「端的に言えば、女性は年齢・容姿・人柄、男性は年収・容姿・学歴・人柄が大事です。それらを総合して婚活偏差値を出しています。大学受験でも、偏差値50の人が慶応大学に入るのは無理ですよね」
年齢を重ねた女性や収入が低めの男性は、この婚活偏差値は低くなってしまう。しかし、それは問題ではないと岡本さんは力強く説く。
「志望校を変更するか、それでも慶応に入るために必要な努力をするのか。冷静に考えて行動することが大切です」
合格(成婚)しやすくなる方法として、「パーソナルカラー診断」と「ライフデザイン講座」を入会者全員に受けてもらう。前者は、提携のイメージコンサルタントによって自分の魅力を引き出しやすい色を知り、洋服選びやメイクの指導を受けることができる講座だ。上述の「容姿」項目が飛躍的に向上するため、簡単に婚活偏差値を上げることができる。
ライフデザイン講座のほうは、自分自身を正確に知るためのもので、「志望校」選びにおいて高望みする必要はないことに気づくこともある。再び岡本さんが熱い口調で説明する。
「ファイナンシャルプランナーの方に講師になってもらっています。結婚式、新婚旅行、住む場所、子どもの数と学校など、どんな結婚生活がしたいのかを具体的に言ってもらい、それに必要な金額を出すのです。多くの人が意外と現実的な結果になり、高収入の相手でなくても自分にとっての理想的な結婚が実現できるとわかったりします」
同じ効果は、漠然としたイメージで「結婚したら子どもが欲しい。だから若い女性を探したい」と考えている男性にも期待できるだろう。実際のところ、今から子どもを作ったら社会人として巣立つまでいくら必要なのか、自分の老後から逆算するとそれは可能なのだろうか。子ども以前に夫婦が幸せに暮らすためには何が大切なのか。具体的に考えていくことで、アラフォー以降の女性やシングルマザーが結婚相手の候補に上がるかもしれない。
重要なのは、パートナーとの関係性を育てること
田中さんは自らの経験をもとに、このライフデザイン講座は「婚活疲れ」を軽減すると優しく言い添える。
「ゴールがわからないままに走るのはとても疲れます。自分なりの理想の結婚ができるのはこういう相手なのだと明確にしておくと気持ちがブレにくくなります」
岡本さんによれば、各種の連盟に加入している結婚相談所に入って膨大な会員データベースにアクセスすれば、お見合いすること自体は難しくない。重要なのは、たった一人の相手をパートナーだと認識して、関係性をお互いに育てていくことなのだ。
「自分自身を知り、必要な努力をする。やるのは自分です。私たちはそのための場所と機会を提供し、サポートすることしかできません。予備校のチューターみたいなものですね」
働き過ぎの同僚である田中さんの婚活を厳しく優しく支えた岡本さん。「他の人にはもっと短期間で結婚できるように教えてあげたい」と思った田中さん。2人の温かい気持ちがhachidoriとして結実している。(取材日:2018年11月18日)
※ハチドリの問い合わせ先はこちらです。
※本記事は結婚相談所比較申込サイト「こんかつ山」で掲載していたものです。サイトの閉鎖に伴い、関係者の許可を得て、本ホームページに転載します。記事内容は取材当時のものです。
著者プロフィール
- 1976年埼玉県所沢市生まれ、東京都東村山市育ち。男三人兄弟の真ん中。一橋大学法学部を卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に入社して1年後に退社。編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターになる。
高校(武蔵境)・予備校(吉祥寺)・大学(国立)を中央線沿線で過ごし、独立後の通算8年間は中央線臭が最も濃いといわれる西荻窪で一人暮らし。新旧の個人商店が集まる町に居心地の良さを感じていた。今でも折に触れて西荻に「里帰り」している。
2012年、再婚を機に愛知県蒲郡市に移住。昭和感が濃厚な黄昏の町に親しみを覚えている。月のうち数日間は東京・門前仲町に滞在し、東京原住民カルチャーを体験中。
2019年、長期連載『晩婚さんいらっしゃい!』により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。
<著書>
『30代未婚男』(リクルートワークス研究所との共著/NHK出版 生活人新書)
『ダブルキャリア』(荻野進介氏との共著/NHK出版 生活人新書)
『バブルの遺言』(廣済堂出版)
『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』(ぱる出版)
『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)
『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せのつかみ方~』(講談社+α新書)
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