食い意地が張っていて寂しがりな僕。ちゃんとおいしくて、僕を含む客の顔を覚えてくれる飲食店が好きなのです。東京・西荻窪での独身時代は週3ペースでアジア食堂「ぷあん」に通っていました。カウンター越しにお店の人たちとおしゃべりしていて生まれた企画が「スナック大宮」。ぷあんの2階を借りて、料理やドリンクはお店に出してもらって、読者の人たちと宴会してみることにしたのです。思った以上に楽しくて、5年以上も続いています。
4年前に結婚して愛知・蒲郡に引っ越してからも馴染みの飲食店が少しずつできました。その中でも、蒲郡駅前の「喫茶スロース」には毎日のように通っています。挽きたて淹れたての上質なコーヒーを飲みながら、店主の美智乃さんと少しおしゃべり。原稿書きと昼寝で終わってしまいがちな毎日にメリハリが生まれます。スロースに感謝!
いま、このスロースの2階でもスナック大宮を年3回ぐらい開催させてもらっています。ビールやワインもおいしいスロースに、僕とお客さんたちが惣菜やおつまみを持ち込んでワイワイやっていますよ。蒲郡以外の土地(東京や大阪など)から遊びに来てくれる人も毎回いるのです。先月に開催した際には、僕の読者ではなくスロースのお客さんだという女性が参加してくれました。名古屋在住のAさんです。
聞けば、スロースのお客さんになったのもごく最近とのこと。すぐにスナック大宮に参加し、しかも場を華やかに盛り上げてくれました。Aさん、すごい行動力と魅力ですね! 日を改めてスロースでお会いして話を聞くことにしました。
――名古屋から蒲郡までは快速電車でも40分以上かかります。喫茶スロースを知ったきっかけは何ですか?
私は蒲郡市内の料理教室に通っています。そこで仲良くなった人に「コーヒーがおいしい」とスロースを教えてもらいました。店主の美智乃さんにご主人との出会いと結婚についてお話を聞いていたら、「こんな出会いの場もあるよ」とスナック大宮を紹介してもらったんです。ライターさんのファンの方の集まりだからチャラチャラしていない知的な人が多いのかなと期待しました。
――スナック大宮はお見合いパーティーではありませんが、30代40代の独身男女が多いのは確かですね。実際、参加してみてどうでしたか。
文章をちゃんと読んで入り込むことができる人たちなので、いい意味で内省的だと思いました。それでいて、初対面の人たちとしゃべる姿勢ができている。楽しく過ごさせてもらいました。
――僕のことはどう思いました? 想像よりカッコ良かった、みたいな感想を聞かせてください(笑)。
美智乃さんからは「有名なライターさんだよ」と聞いていたので、もっと年上の方かと思っていました。みんなで大宮さんのお話を聴く会なのかとも思っていたのですが、みんなで自由におしゃべりする雰囲気なんですね。意外でした。
大宮さんはとても話しやすかったです。その「普通っぽさ」はわざと出しているんですか?
――いや、そんなことはありません。でも、僕のことを好きそうな人たちに囲まれると、嬉しくなって甘えてしまって子どもっぽくなりがちです。時と場合によってエロくなります。もちろん、スナック大宮ではエロは抑えています。
大宮さん、エロがにじみ出ていましたよ。多分、みんなにバレています。
――ええっと、話題を戻しましょう。スナック大宮で改善してほしい点はありますか?
途中で男性だけ2回席替えをしましたよね。女性は同じ席に座ったまま。おかげで男性とは全員とお話ができましたが、女性は最初に座った席の近くにいる人たち以外とは話せませんでした。私は女性とも仲良くなりたかったです。
――そうですね。「お見合いパーティーではない」と言いながら、男女バランスや男女の出会いに配慮し過ぎてしまっている自分がいます。後半はフリータイムにして、立食にすればよかったかもしれません。今後の参考にさせてもらいます。最後に、スナック大宮などの出会いの場に出ることを躊躇している人にアドバイスがあれば教えてください。
私は初めての場所に出ることが好きなタイプです。ワイン会などにも一人で参加します。でも、親しい人の紹介や推薦があると安心ですよね。スナック大宮は、好きなコーヒーショップであるスロースの2階で開催するので気軽に参加できました。
初対面の人に感じよく話しかけるのは勇気が要りますよね。私はこう見えてもナイーブなので、相手の反応で傷つくことはあります。でも、出会いという目的達成を優先することを心がけているんです。せっかく出会いの場に来ているのに誰にも話しかけないのは自己防衛に過ぎないと思います。
明るくて感じのいいAさん。「出会いの場」を見つけて生かすことに関するお話はとても勉強になりました。傷つくことを恐れすぎず、目的達成を優先するのは大切なことだと思います。
インタビューの後は再び「エロ談義」に。「寂しいだけのエロはニセ物のエロ」など、またまた名言が飛び出したのです。ここでは詳しく書きませんが、僕は思い当るところがあるので凹みながらも触発されました。今度、どこかでコラムを書かせてもらおうかと思います。Aさん、ありがとう!
著者プロフィール
- 1976年埼玉県所沢市生まれ、東京都東村山市育ち。男三人兄弟の真ん中。一橋大学法学部を卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に入社して1年後に退社。編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターになる。
高校(武蔵境)・予備校(吉祥寺)・大学(国立)を中央線沿線で過ごし、独立後の通算8年間は中央線臭が最も濃いといわれる西荻窪で一人暮らし。新旧の個人商店が集まる町に居心地の良さを感じていた。今でも折に触れて西荻に「里帰り」している。
2012年、再婚を機に愛知県蒲郡市に移住。昭和感が濃厚な黄昏の町に親しみを覚えている。月のうち数日間は東京・門前仲町に滞在し、東京原住民カルチャーを体験中。
2019年、長期連載『晩婚さんいらっしゃい!』により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。
<著書>
『30代未婚男』(リクルートワークス研究所との共著/NHK出版 生活人新書)
『ダブルキャリア』(荻野進介氏との共著/NHK出版 生活人新書)
『バブルの遺言』(廣済堂出版)
『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』(ぱる出版)
『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)
『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せのつかみ方~』(講談社+α新書)
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