写真:「お酒も料理も好きなので、婚活カフェバーも開きたい」と語る菊池さん。本当に開店しそうな気がします
あなたからしかコーヒーをもらいたくない。「指名客」を持つデニーズの天才バイト
やたらに前向きで行動力があってちょっとお人好しな人が多い――。結婚相談所の経営者を訪ね歩く本連載を20回以上続けてきた感想だ。経営者と言っても、1人で運営している人がほとんどで、はっきり言って大儲けができる業態ではない。無性に人間が好きでぜひお世話したいという人物でないとこの仕事はできないのだと思う。
2020年1月に開業したばかりのmeet Uの代表カウンセラーである菊池友美さんはある意味で典型例である。都内の喫茶店で待ち合わせをしてインタビューをしたが、開始15分後ぐらいには聞き手であるはずの筆者のほうがたくさんしゃべっていた。
菊池さんはとにかく話しやすい人なのだ。好意と好奇心を持ってこちらのことを聞いてくれているのがわかる。ビジネスの世界では「傾聴力」や「コーチング」というのかもしれないが、菊池さんの場合は天性のもののようだ。
「学生時代は地元のデニーズでアルバイトしていました。常連さんたちに気に入っていただき、『コーヒーのお代わりはお前からしかもらいたくない』なんて言われたり……」
大学卒業を控えてアルバイトを辞めることを一部の常連客に報告したところ、真珠のネックレスや商品券などをもらったらしい。チェーン店のアルバイトスタッフがこの域まで達するのはすごい。菊池さんの人柄と努力がうかがえるエピソードである。
このままでは日本という国がなくなるという危機感。20代後半から30代前半の「後輩」を救いたい
立教大学を卒業した菊池さんは人材紹介大手のパソナに就職。5年働いたのち、人事ポータルサイトの運営会社に転職するが、1年後にはパソナに「出戻り」をした。
菊池さんによればパソナでは出戻りも珍しくないらしい。しかし、最初に働いていたときの実績と印象が悪かったら不可能だろう。この経験も菊池さんの信用度を証明していると筆者は思う。
その後、第一子を出産して一時的に専業主婦になり、また人材系の会社に正社員として職場復帰。第二子も産み、2019年12月に円満退職をした。なぜ畑違いの結婚相談所を開こうと思ったのだろうか。
「他人の人生にもっと関わりたいと思ったからです。いま、婚姻率も出生率も下がっていますよね。このままでは日本という国がなくなる、という危機感を持っています。誰かと一緒に生きられることは幸せなことなので、良い結婚を増やせば貧困や犯罪も減るのではないでしょうか」
大きな問題意識と志を真面目な口調で語る菊池さん。主眼は出生率の向上であるため、結婚相談所meet Uで真っ先に応援したいのも20代後半から30代前半の女性である。
「私自身、結婚するまでは頭がしっちゃかめっちゃかな年代だったからです。仕事は好きだけれど、結婚もしたいし子どもも産みたい。どこに向かえばいいのかがわからずに混とんとしていました。ちゃんと考えて行動しないと、ズルズルと時間が経ってしまいます」
自分が送りたい人生をしっかり思い描ければ、結婚相手を選ぶ必要はなくなる
菊池さんによれば、情報が多すぎるのも現代の問題である。SNSなどを通じて他人の姿も頻繁に目に入るので、自信を無くしたり方向を見失ったりしやすい。キャリアコンサルタントでもある菊池さんは、自分を見つめ直して計画を立てて実行する伴走役ができると語る。人材業界で得た経験と資格を婚活サポートに生かしているのだ。
「誰かのためではなく、自分のために結婚してほしいです。自分が送りたい人生をしっかりと思い描けていれば、結婚相手をあれこれ選ぶ必要がなくなります。生理的に無理な相手でない限り、コミュニケーションは自分次第だからです。相手に優しく接すれば、優しさが戻ってきます。それが結婚生活の醍醐味ではないでしょうか」
菊池さん自身、20代のうちに結婚して第一子を産み、その後に2人目を産みたいと心に決めていた。パソナの同期である夫との間に第二子が生まれたとき、達成感があったと振り返る。
「夫は私と正反対で内省的なタイプですが、その世界観が面白いです。開業することには反対されましたが、じっくり話し合ったら理解して応援してくれるようになりました。もちろん、私も夫を応援しています。ちゃんとコミュニケーションをして、自分の人生を描ける体制に持っていくことが大事です」
押しつけがましくはないけれど、聞き上手でかつ自信に溢れている菊池さん。一緒にいるだけでなんだか前向きな気持ちになる力の持ち主だと感じた。人生の岐路に立ったとき、心強い味方になってくれることだろう。(取材日:2020年7月3日)
※meet Uの問い合わせ先はこちらです。
※本記事は結婚相談所比較申込サイト「こんかつ山」で掲載していたものです。サイトの閉鎖に伴い、関係者の許可を得て、本ホームページに転載します。記事内容は取材当時のものです。
著者プロフィール
- 1976年埼玉県所沢市生まれ、東京都東村山市育ち。男三人兄弟の真ん中。一橋大学法学部を卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に入社して1年後に退社。編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターになる。
高校(武蔵境)・予備校(吉祥寺)・大学(国立)を中央線沿線で過ごし、独立後の通算8年間は中央線臭が最も濃いといわれる西荻窪で一人暮らし。新旧の個人商店が集まる町に居心地の良さを感じていた。今でも折に触れて西荻に「里帰り」している。
2012年、再婚を機に愛知県蒲郡市に移住。昭和感が濃厚な黄昏の町に親しみを覚えている。月のうち数日間は東京・門前仲町に滞在し、東京原住民カルチャーを体験中。
2019年、長期連載『晩婚さんいらっしゃい!』により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。
<著書>
『30代未婚男』(リクルートワークス研究所との共著/NHK出版 生活人新書)
『ダブルキャリア』(荻野進介氏との共著/NHK出版 生活人新書)
『バブルの遺言』(廣済堂出版)
『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』(ぱる出版)
『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)
『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せのつかみ方~』(講談社+α新書)
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